【2026年最新】マーケティングファネルはAIでどう変わったか|基礎から生成AI活用まで

顧客が製品やサービスを知り、最終的に購入に至るまでの一連のプロセスを「マーケティングファネル」と呼びます。ファネルを使って顧客の行動を段階に分けて捉えることで、どこに課題があるのかが見えるようになります。
ただし2026年現在、このファネルそのものが大きな変化に直面しています。AI検索の普及により、従来「認知」や「情報収集」の段階で発生していた行動が、検索結果の画面内で完結してしまうようになったためです。
この記事では、マーケティングファネルの基本を押さえたうえで、AIによってファネルがどう変わりつつあるのか、各段階で生成AIをどう活用できるのかを解説します。あわせて、変化のなかで見落とされやすい計測上の課題にも触れます。
マーケティングファネルとは
マーケティングファネルとは、顧客が製品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを可視化したモデルです。
「認知」から始まり、段階が進むにつれて対象となる人数は絞られていきます。最初は幅が広く、下にいくほど狭くなる形状が漏斗(ファネル)に似ていることから、この名前がつきました。
段階ごとに人数と遷移率を把握することで、どの段階で顧客が離れているのかを特定でき、改善すべき箇所が明確になります。
ファネルの3つの種類
ファネルには、対象とする範囲によっていくつかの型があります。
パーチェスファネル(購買ファネル)
認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 購入、と進むにつれて人数が絞られる、最も一般的なファネルです。単に「マーケティングファネル」と言う場合、通常はこれを指します。
インフルエンスファネル
購入した「後」の行動を図式化したものです。継続 → 紹介 → 発信と進むにつれ、影響を受ける人数が増えていく点が特徴で、逆三角形ではなく通常の三角形になります。
SNSで誰もが情報を発信できるようになった背景から生まれた考え方で、サブスクリプションやECのように継続利用が重要な事業と相性がよい型です。
ダブルファネル
パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたものです。購入前の獲得と購入後の育成・拡散を一気通貫で設計できるため、新規獲得だけでなくCRM戦略まで含めて考えたい場合に適しています。
代表的なフレームワーク
ファネルの各段階をどう区切るかについては、いくつかのフレームワークがあります。
AIDMA(アイドマ)
最も古典的なフレームワークで、5つの段階の頭文字から名付けられました。
- Attention(認知):広告やメッセージに気づく段階。デザインやキャッチコピーで注意を引きます
- Interest(興味):製品に興味を持つ段階。特徴や利点を伝えて関心を高めます
- Desire(欲求):欲しいと感じる段階。メリットや価値を強調します
- Memory(記憶):情報を記憶する段階。繰り返しの接触で印象に残します
- Action(行動):実際に購入する段階。購入の障壁を取り除きます
AISAS(アイサス)
インターネットの普及を受けて生まれたフレームワークです。AIDMAにはなかった「検索」と「共有」が加わっています。
- Attention(認知) → Interest(興味) → Search(検索) → Action(行動) → Share(共有)
購入前にインターネットで調べ、購入後にSNSで感想を共有する。この行動様式を反映した点が特徴です。
なお近年は、SNSでの発見から始まる行動を表すDECAX(発見・関係・確認・行動・体験共有)や、推奨行動まで含む5A理論(認知・訴求・調査・行動・推奨)など、より現状に合わせたモデルも使われています。
どのフレームワークが正解というものではなく、自社の商材と顧客行動に合うものを選ぶのが実務的な考え方です。
【2026年】AI検索でファネルはどう変わったのか
ここからが本題です。従来のファネルは「検索してサイトを訪れ、情報を集めて比較する」という行動を前提に組み立てられていました。この前提が、AI検索の普及によって崩れつつあります。
検索結果で答えが完結するようになった
Googleの検索結果上部にAIが要約を表示する「AI Overviews」の出現率は、急速に高まっています。分析ツール大手の調査では、2025年1月時点で米国デスクトップ検索の6.49%だったものが、2か月後の3月には13.14%へと倍増しました。2026年に入ってからの調査では、Google検索全体の20%以上で表示されるとされています。
なお業種による差は大きく、ヘルスケアで88%、BtoBテクノロジーで82%、教育で83%といったように、専門的な情報を扱う分野ほど表示率が高いという分析もあります。
その結果として起きているのが「ゼロクリック」の増加です。検索したものの、どのサイトも訪問せずに終わるケースが増えました。
米国ではGoogle検索の約58.5%がクリックなしで終了し、AI Overviewsが表示されたクエリに限れば約83%にまで上昇するという調査結果が出ています。対話型の「AIモード」では、この数字はさらに高くなるとされています。
クリック率への影響も複数の調査で報告されています。30万キーワードを対象とした分析では、AI Overviewsが表示された場合に検索1位ページのクリック率が34.5%低下したとされ、別の調査では組織的なクリック率が1.76%から0.61%へと約61%下落したという結果も出ています。数値には幅がありますが、下落の方向性は一致しています。
ファネルの上部が「見えなくなる」
これらが意味するのは、ファネル上部の行動が自社サイトの外側で起きるようになったということです。
従来であれば、「〇〇とは」「〇〇 選び方」といった情報収集の検索から自社サイトに訪問があり、そこからアクセス解析で行動を追えました。しかし現在は、AIが要約を提示することで、サイトに来ないまま比較検討が進みます。
つまり、認知や興味の段階が数値として捕捉しづらくなっています。ファネル分析の前提となるデータそのものが、上部から欠けていく構造です。
ただし、下部への影響は限定的
一方で、悲観一色ではありません。押さえておきたい重要な事実があります。
AI検索の影響は、検索の目的によって大きく異なります。 調査によれば、情報収集を目的とした検索のゼロクリック率が74%に達するのに対し、購入や申し込みを目的とした検索では31%にとどまります。
つまり、購買に近い検索ほど、ユーザーは実際にサイトを訪れているということです。
さらに、AI Overviews内に自社が引用された場合には、むしろクリックが増えるという調査結果もあります。ある分析では、AI Overviewsに引用されたページのクリック数が最大35%増加したとされています。表示されること自体が不利益とは限りません。
そして注目すべきは、AI経由で訪れた訪問者のコンバージョン率が、従来の自然検索経由と比べて4.4倍だったという調査結果です。流入数は減っても、たどり着いた人の質は高まっている可能性を示しています。
整理すると、次のような構図になります。
ファネルの位置 | AI検索の影響 |
上部(認知・情報収集) | 大きい。情報収集目的の検索はゼロクリック率が74%に達する |
中部(比較・検討) | 中程度。AIが比較を代行する場面が増えている |
下部(購買意図) | 小さい。購買目的の検索のゼロクリック率は31%にとどまる |
上部で広く集めて下に流すという従来の発想は成立しにくくなる一方、下部に降りてきた顧客の価値は相対的に高まっていると言えます。
購買そのものがAI上で完結し始めている
もう一つの動きとして、AIサービス内での購買機能の拡充があります。ChatGPTでは、対話を通じて条件や好みを絞り込みながら商品を提案する機能が実装され、Perplexityでは決済サービスと連携してチャット画面内で購入まで完了できる仕組みが登場しています。
Google側でも、AI OverviewsやAIモードへの広告掲載が英語圏で始まっており、日本での展開も見込まれる段階です。ファネルの一部が、検索エンジンや対話型AIの内部に取り込まれつつあります。
ファネルの各段階における施策と、生成AIの活用
環境が変わっても、段階ごとに適切な働きかけを行うという考え方自体は有効です。ここでは各段階の代表的な施策と、生成AIをどう組み込めるかを見ていきます。
認知の段階:オウンドメディアとコンテンツ
認知を広げる手段として、オウンドメディアの運営は依然として有効です。自社で運営するため、他社のプラットフォームに依存せずメッセージを届けられます。
一方で、コンテンツ制作には時間とコストがかかります。ここで生成AIを使うことで、構成案の作成、初稿の執筆、アイキャッチや挿入画像の生成といった工程を効率化できます。
ただし2026年においては、量を増やすだけの発想は通用しにくくなっています。 一般的な情報をまとめただけの記事は、AIが要約して代わりに答えてしまうためです。
自社の一次情報、独自のデータ、実際の事例といったAIが代替できない要素を含められるかどうかが、成果を分けます。
興味の段階:メールマガジンとナーチャリング
見込み客の関心を維持し高めていく段階では、メールマガジンなどの継続的な接触が効果を発揮します。
生成AIは、顧客リストからのセグメント設計を対話しながら検討したり、セグメントごとに文面を出し分けたりする作業に活用できます。従来は工数の制約で断念していた細かな出し分けが、現実的になりました。
検索・比較検討の段階:問い合わせ対応
顧客が具体的な情報を求めて動く段階です。疑問や不安を解消し、次の行動へ進めるよう支えることが求められます。
以前は、この段階の自動化といえば定型的なチャットボットが中心でした。現在は生成AIを組み込むことで、想定外の質問にも文脈を踏まえて答えられるようになっています。
社内資料やFAQを学習させ、根拠のある回答だけを返す仕組み(検索と生成を組み合わせる方式)も普及しました。
注意すべきは、事実と異なる回答を生成してしまうリスクです。顧客対応で誤った情報を伝えれば信用問題になります。参照先を限定する、確信が持てない場合は有人対応へ引き継ぐ、といった設計が欠かせません。
行動の段階:意思決定の後押し
購入や申し込みの直前では、心理的な障壁を下げる工夫が必要です。フォームの簡素化、よくある質問の掲示、実績や導入事例の提示などが該当します。
この段階でのAI活用としては、離脱しそうなユーザーへの接客表示や、行動に応じた提案の出し分けなどが挙げられます。
共有・推奨の段階:購入後の関係づくり
購入後の顧客が発信する情報は、新たな顧客の認知につながります。レビュー投稿の促進、コミュニティの運営、継続利用の支援などが施策にあたります。
生成AIは、集まったレビューや問い合わせ内容を分類・要約し、傾向を掴む作業に活用できます。
ファネル分析の進め方
ファネルは図として描くだけでは意味がありません。数値を当てはめて初めて改善に使えます。
1. ゴールを明確にする
最終的に何を成果とするのかを定めます。購入、問い合わせ、資料請求など、事業によって異なります。
2. プロセスを段階に分ける
自社の顧客がたどる経路を、実態に即して段階分けします。フレームワークをそのまま当てはめるのではなく、自社の商材で実際に起きている行動に合わせることが重要です。
3. 各段階の数値を集める
段階ごとの人数と、次の段階への遷移率を出します。ここでどこに大きな落ち込みがあるかが見えてきます。
4. 課題箇所を特定し、施策を打つ
最も遷移率が低い箇所が、改善の優先度が高い部分です。全段階を均等に改善しようとするのではなく、ボトルネックに集中するほうが効果は出ます。
5. 効果を測定し、繰り返す
施策の前後で遷移率がどう変化したかを確認し、次の改善につなげます。
ファネルを扱ううえでの注意点
いくつか、実務で陥りがちな点があります。
顧客は一直線には進まない
ファネルは整理のための単純化されたモデルです。実際の顧客は、比較検討まで進んでから振り出しに戻ったり、複数の商品を並行して検討したりします。モデルに現実を無理やり当てはめると、判断を誤ります。
データが取れない段階がある
前述のとおり、AI検索の普及により、ファネル上部の行動は捕捉しづらくなっています。数値が取れる範囲だけで判断すると、実際には効いている施策を見落とすことがあります。
数値だけを見ない
遷移率が低い理由は、数値からは分かりません。なぜ離脱したのかを知るには、顧客への聞き取りや問い合わせ内容の確認といった定性的な情報も必要です。
ファネル分析の盲点は「電話」にある
ここまで見てきたように、AI検索の時代にはファネル下部に到達した顧客の価値が相対的に高まっています。情報収集の多くがAI上で完結するなかで、わざわざ企業に接触してくる顧客は、それだけ検討が進んでいるということだからです。
そして、その接触手段として無視できないのが電話です。
電話はファネル分析から抜け落ちやすい
不動産、工務店、医療、士業、修理業といった業種では、比較検討が進んだ段階で「まず話を聞きたい」と電話をかけてくる顧客が一定数います。ところが、この電話はファネルの数値に反映されないことがほとんどです。
その結果、次のようなことが起こります。
- 下部の数値が実態より小さく見える:Webフォームからのコンバージョンだけが集計され、電話での問い合わせは数に入りません
- どの段階の施策が効いたのか分からない:電話をかけてきた顧客が、どの広告やコンテンツを経由したのかを追えません
- 改善の判断を誤る:実際には成果を生んでいた施策が「効果なし」と評価されてしまいます
ファネル分析の目的は、どこに課題があるかを見つけることです。最も成果に近い段階のデータが欠けていれば、その目的自体が果たせません。
電話という接点を計測可能にする
この課題を解決するのがコールトラッキングです。流入経路ごとに異なる電話番号を出し分けることで、どの広告・どのキーワード経由でかかってきた電話なのかを判別できる仕組みです。
ファネルの文脈では、次の効果があります。
- ファネル下部の数値を正確に把握できる:フォームと電話を合算した、本当の成果が見えるようになります
- 上部の施策との接続が確認できる:どのコンテンツや広告が、最終的に電話を生んでいるのかを追えます
- 通話の内容から質を判断できる:件数だけでなく、商談につながった問い合わせかどうかまで踏み込めます
- 広告のAI最適化に成果を還元できる:電話で成約した顧客のデータを広告側に戻すことで、配信の精度を高められます
AI検索によって上部の可視性が下がるからこそ、確実に計測できる下部のデータを取りこぼさないことの意味が増しています。
よくある質問
ファネルを実務で使う際に、疑問として挙がりやすい点をまとめます。
AIDMAとAISAS、どちらを使うべきですか
商材と顧客行動によります。検索や口コミが購買に大きく関わる商材ならAISAS、テレビCMなど一方向の接触が中心ならAIDMAの考え方が馴染みます。どちらか一方に決める必要はなく、自社の顧客が実際にたどる経路に合わせて段階を設計するのが本来の使い方です。
ファネルはもう古い、という意見をどう考えればよいですか
顧客の行動が一直線でなくなったことは事実です。ただし「どの段階で顧客が減っているか」を把握する道具としての有用性は失われていません。モデルを現実そのものと考えず、分析の枠組みとして使う分には、今も機能します。
AI検索でファネル上部の流入が減った場合、何をすべきですか
一般的な情報を扱うコンテンツは、AIに代替されやすくなっています。自社にしかない一次情報や事例を含めること、AIの回答内で自社が引用される状態を目指すこと、そして指名検索を増やすためのブランド想起の施策が有効です。
AI Overviewsに引用されればクリックが増えるという調査もあり、表示を避けるのではなく引用される側に回るという考え方が現実的です。あわせて、下部の計測精度を高めて確実に成果を拾うことも重要になります。
まとめ
マーケティングファネルとAIについて、要点を整理します。
- ファネルは、顧客が購入に至る過程を段階に分けて課題を見つけるためのモデル
- パーチェス・インフルエンス・ダブルの3つの型があり、購入後まで含めて設計できる
- AI検索の普及により、ファネル上部の行動は自社サイトの外で完結しやすくなった
- 一方で購入意図の強いクエリや指名検索への影響は小さく、下部の価値は相対的に高まっている
- 生成AIは各段階の施策を効率化できるが、AIに代替されない独自性が問われる
- 成果に最も近い段階のデータが欠けていると、ファネル分析そのものが機能しない
環境が変化しても、顧客の行動を段階で捉えて課題を見つけるという基本は変わりません。変わったのは、どこが見えて、どこが見えなくなったのかという点です。
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