Cookie規制でどんな影響が出るの?今後の予測は?
オンライン上でユーザーがどのように行動したかを分析するために、今までCookieが使われてきました。しかしCookieの使用は、ユーザの同意もないままに個人情報が流出してしまっているという問題がありました。
そこで近年ではCookie規制が行われるようになっています。Cookie規制が行われることで、企業がCookieにもとづいたユーザー情報を手に入れるのが難しくなっています。では企業はCookie規制に対してどのように対応すればよいのでしょうか。
この記事ではCookie規制が行われる理由だけでなくその影響と、今後の変化について説明します。
Cookieとは
Cookieとはどんなものかというと、ユーザーが使っているブラウザへウェブサイトや広告の情報を残すための技術です。Cookieが保存されていると、ユーザーの追跡が簡単になります。
たとえばアフィリエイト広告では広告を経由した後、しばらく経ってから商品を購入しても、Cookieが保存されていれば同じユーザーだと認識できます。しかしCookieが削除されてしまうと、広告経由で購入したとは認識されなくなるわけです。そうするとアフィリエイターには報酬が入らなくなります。
Cookieはどのようなところで使われているの?
Cookieはどのようなところで使われているのでしょうか。Cookieには2種類あり1st party Cookieと3rd party Cookieがあります。
・1st party Cookieとは
1st party Cookieとはウェブサイトから直接発行されるCookieで、アカウント情報の保存などに使われています。たとえばショッピングサイトでIDやパスワードを入力することがありますよね。
その際にIDとパスワードの情報が保存されていたら、非常に楽です。他にもホーム画面で名前や住所や電話番号はすぐに入力できるというメリットもあります。1st party Cookieの場合、訪れたウェブサイトしか対応していないことが多いですが、ユーザーの行動を記録しているわけではないので規制の対象になりにくいといえます。
・3rd party Cookieとは
3rd party Cookieとは広告が保存するCookieのことです。この場合、ウェブサイトを移動してもユーザー情報がCookieとして保存されているため、ユーザーの行動履歴がわかるというメリットがあります。この3rd party Cookieが規制の対象になっています。
Cookie規制はなぜ行われるのか?
3rd party Cookieが規制され、アップルが提供する広告識別子(IDFA)も規制されています。Cookie規制が行われる背景には、Cookieなどは個人情報に当たり、本人の同意と使用目的が明確化されなければならないとされたからです。
今までデータは取得した企業側のものでしたが、現在データはユーザー側の持ち物であるということが明確化されているわけです。そのため今後もこの流れが進み、Cookieにもとづくデータの取得はより困難になっていくでしょう。
各ブラウザのcookie規制の状況
このようにcookie規制が行われていますが、ブラウザによってその対応は違います。しかし基本的には規制する方向へと向かっているので、顧客がどのブラウザを使っても対応できるような対策は必要になるでしょう。
safariは3rd party Cookieを禁止に
safariは3rd party Cookieを禁止しています。ITPという言葉を聞いたことがあると思いますが、Appleが行っているトラッキング防止機能であり、1st party Cookieも規制対象になっています。
Googleは2024年後半に3rd party Cookieを廃止予定
Googleは3rd party Cookieの廃止を宣言していますが、当初の予定であった2023年は過ぎてしまっており、2024年後半から順次行うとしています。cookieの代わりとなる技術開発を行っており、その開発が終わってから3rd party Cookieが廃止されると思われます。
Microsoft edgeはトラッカー規制機能がある
Microsoft edgeはトラッカーを防止する機能が備わっており、有害だと認識されるトラッカーはブロックされます。全面的にブロックされるわけではないですが、今後は3rd party Cookieの全面規制に向かう可能性は否定できません。
Firefoxは初期設定でトラッカーをブロックしている
Firefoxは初期設定でトラッカーのcookieをブロックする仕様になっています。わざわざ設定を変更して使う人は少ないと考えられるため、3rd party Cookieが規制されていると考えた方がよいでしょう。
日本の改正個人情報保護法とcookie規制
日本では2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました。今回、cookie規制に関わる法改正が行われています。その改正の1つが、個人データの利用停止・消去等の請求です。
今までは目的外利用や不正取得の場合、第三者提供義務違反の場合のみ個人データの利用停止や消去の請求ができました。しかし法律が改正され、本人の権利または正当な利益が害される恐れのある場合も請求が可能となっています。
つまりcookieに関しても、個人の権利が破壊されるという理由で消去を求められる可能性があるというわけです。
さらに個人関連情報の第三者提供規制が新設されました。その規制により個人情報に関連する情報について、本人の同意がなければ第三者に提供することはできなくなりました。
cookieは個人関連情報として考えられているため、本人の同意がなければ第三者に提供できません。このように世界だけでなく日本でもcookie規制は進んでおり、cookie規制対策は必須となってくるでしょう。
日本の改正電気通信事業法とcookie規制
2023年6月に改正電気通信事業法が施行され、オンラインサービスで事業者がcookie情報を外部に提供する場合、利用者に対して事前に知らせるか、同意を得るかのどちらかが必要になりました。このように日本でもcookie規制が法律でなされるようになったわけです。
cookie規制のマーケティングに対する影響
cookie規制が行われていることで、マーケティングを行う際に以下のような影響が出ます。
リターゲティング広告が制限される
3rd party Cookieが規制されることで大きな影響が出るのが、リターゲティング広告です。一度サイトを訪問した人を追跡して、広告を表示する仕組みで3rd party Cookieを利用しています。そのため3rd party Cookieが制限されると、リターゲティング広告の実施が難しくなります。
リターゲティング広告を重視してマーケティングしていた企業は多いはずです。リターゲティング広告で集客していた企業は、新しいマーケティング戦略を考えていく必要があるでしょう。
コンバージョンに関する計測制度が低下する
基本的にユーザーはコンバージョンに至るまで複数回サイトを訪問します。しかしcookieの使用が制限されると、期間が空いて訪問したユーザーは新規ユーザーとして計測される可能性が高いです。そのためコンバージョンに関する計測が不正確になります。
Cookie規制で行われている対策
このようにますますCookieは規制されるようになっていくため、Cookieにもとづいてユーザー情報を取得するのは困難になるはずです。ユーザー情報が取得できないとなると、広告の配信において最適化は難しくなる可能性が高いでしょう。
ではどのような対応が考えられるでしょうか。ここではcookie規制で行われている対策について解説します。
ファーストパーティデータやゼロパーティデータを活用した広告
ファーストパーティデータのように自社データを活用した広告手法がまず考えられます。また顧客自らが情報を提供するゼロパーティデータを活用した広告手法も、今後進んでいくでしょう。
cookieを使わない広告
cookieを使わない広告手法としてはコンテキストターゲティング広告があります。この手法はユーザーが見ているwebサイトを分析し、そのサイトの文脈に合った広告を表示する手法です。
AIが進化したことにより、webサイトの内容の分析が可能となり、広告の最適化ができるようになっています。他にもGoogleファインド広告があります。こちらはGoogleのログインユーザーの検索履歴や閲覧履歴をもとに広告を表示します。Googleユーザーに対しては広告の最適化ができるというわけです。
SEOの強化
SEOを強化して広告に依存しない集客方法も考えられます。SEOで検索結果の上位を取るのは難しくなってきましたが、まだまだ改善の余地はあります。またコストを抑えることも可能なので、うまく活用すべきでしょう。
SNSで集客する
SNSで集客する方法もあります。現在、ほとんどの企業やTwitterやInstagramの運用を行っているはずです。ただ残念ながら、アカウントを作っただけで終わっている企業も多いです。
そうしたアカウントをしっかりと運用して集客に結び付ける方法があります。SNSの運用は思った以上に手間がかかります。運用担当者を配置して、SNSの運用をしていきましょう。うまく行かない場合は外注するのもひとつの方法です。
リピーターの獲得を強化する
新規顧客を獲得するよりも、リピーター獲得を強化するという方法もあります。既存顧客をリピーターとして育成していく方がコストもかかりません。新規顧客を獲得するのも大切ですが、まずはリピーターを増やしていく方法を考えてみても良いでしょう。
CNAME対応では難しい
「CNAME対応」もcookie規制の対策として行われていました。「CNAME対応」とは、自社サーバーから直接1st party Cookieを発行することで、ITPの影響を受けないようにしているサービスです。
CNAMEとはDNSで定義されたドメインの別名のことです。この対応をすることで、3rd party Cookieを1st party Cookieのように見せかけることが、可能でした。
この方法はまさに抜け道の手法だったわけです。ただしこの手法も一時的なものにならざるをえません。すでにアップルはその対策に乗り出しています。
Cookie規制の影響で今後どう変わる?
Cookie規制が進む中で、行われている対策について紹介しました。今後、広告業界もファーストパーティデータを使った計測手法を進めていく方向です。たとえばGoogleのようなプラットフォーマーが独自の技術で情報を収集する流れです。
ある意味プラットフォーマーが基準となって、そこで入手した個人情報保護に違反しないデータを提供する形になるでしょう。
そうした流れに対して、個々の企業は独自に個人の情報を取得する仕組みづくりが必要になってくるはずです。そのためにはユーザーにとってメリットのあるサービスを提供し、ユーザーに同意してもらった上で情報を提供してもらわなければなりません。
そういう意味では、個々のユーザーにしっかりと向き合ったサービスを提供しなければならないでしょう。しかしこうした企業が持っている顧客データであるファーストパーティデータを活用したとしても、ターゲットに広くリーチしたり、正しく効果を測定することは難しくなってます。
そのため効果測定においては新しい方法も登場しています。たとえばAIを活用した方法です。過去のデータから効果を予測するやり方です。他にもプレポスト調査などの計測タグを使わない方法も登場しています。
こうした新しい計測方法は今後もさらに増え続けるので、広告配信を行っている担当者は常に新しい情報を入手しておいた方がよいでしょう。
まとめ
Cookie規制の流れは、もはや止まることはないでしょう。そのためCookieによらない情報の取得方法を模索しなければなりません。個人情報の提供は本人同意が必要なわけですから、ユーザーが同意した上で情報を提供してくれるような仕組みづくりが必要になってくるはずです。
ただ情報を取るのではなく、よりよいサービスを提供するということこそが、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。